2024年12月23日月曜日

EP04 サルマンとその弟ムスリム

Muslimと出会ったのは今から32年前で、本人が小学校6年生の時でした。兄のサルマンは7年間に渡って高校と大学への進学への支援を続けた経緯があります。インドネシアの家族の絆は、我々の想像以上に強いものがあります。お互いに密なる連絡を取り合い助け合っています。最近はスマホのSNSを活用することで、即ビデオコールで家族同士がつながっています。30年前は郵便物でのやり取りしか方法がなかったのですが、デジタル化の影響を受けて瞬時に相手の動向を探ることが出来るようになりました。サルマンは大学卒業後、銀行の融資部門に勤務していましたが、今は自分でランドリーショップを経営しています。いつもはスマトラに出かけるのですが、今回はジャワ島を中心に旅を続けることになりました。ジャワ島には元実習生達が首を長くして待っています。


さて、仲の良い兄弟の連携で、弟のモスリムは空港まで迎えに来ました。本人も今44歳の長い人生の中で辛い経験も多くしてきたようです。兄のサルマンとは、学生時代からの交流がきっかけで、数年に一度再会を続けていました。さて、赤色の自家用車は自宅を目指してまっしぐらです。高速道路をバンバン飛ばし、1時間後には自宅到着です。モス(MUSLIM)は、衣料品の製造販売のお店を抱えています。初めてジャカルタに来た時は、衣料品を抱えて行商をしていたそうです。その後次第に才覚を現し、今は、2軒の家を借りて一軒は縫製工場で3人の従業員を抱えています。もう一軒の家は建物全体に繊維素材や、完成した商品が5つの部屋にうず高く積まれています。もう立派な社長です。と言っても、四六時中仕事に追われているわけではなく、朝は息子の私立小学校への送迎などもこなしています。年に数回実家に帰ることもあります。そうした場合は飛行機(最近高くなり、ジャカルタからパダン・スマトラまでは1万円の価格ですが、さほど気にしていません。バスで一泊2日よりもはるかに快適です。ジャカルタ郊外の高級住宅地(守衛が居て、専任の清掃人、庭師がメンテをしてくれる)に住んでいます。一階建てで部屋数が少ないのですが、今回は息子の部屋を提供してもらいました。3時過ぎに自宅に着いたので、早速彼の事務所や倉庫そして縫製所を見学しました。彼らの周囲は殆どが同郷です。奥さんの実家もスマトラの同じ村の出身で、陽気で気さくな人柄です。Muslimは同郷から訪ねた人々が困っていたら、何かと支援を続けたそうで、皆から慕われているようです。

サルマンに似て、少しノンビリした性格ではありますが、商売のコツはしっかりと叩き込んでいるようです。今はシンガポールや中近東へも納品しています。勿論国内へも50キロの梱包を作って運送業者に配達を依頼しています。カリマンタン島への荷物は船便になるので2か月かかるとか。従業員も10人ほど抱えた小さな町工場の社長とも言えるでしょう。3人の従業員が熱心にミシン作業を続けています。住み込みで働いているようで建物の一角には台所もあります。朝は住宅敷地内の散歩です。普通の場所と異なり清潔そのもので路上にゴミなどは山楽していません。朝食を終えて彼の倉庫に向いましたが、驚いたことに犬を15匹飼っています。向かいに住むクリスチャンのお爺さんが犬の散歩係りを引き受けています。その日は一緒に周辺の散歩に出かけました。その後は友人のお店に立ち寄ったり、アッという間に時間が過ぎて行きます。食事は毎回自宅で取りますが、奥さん手作りのパダン料理がメインです。

二日目の夕方は、夜8時ごろからバイクで地元のサッカー場に出かけました。Muslimは地元の社会人サッカーのグループに入っています。背番号7で試合に出場しています。彼のグループは大半が西スマトラ出身だそうです。今回の試合では残念ながら負けてしまいました。グループ内でのメンバーは幅広い年齢層でカバーされています。試合に勝つというよりも、彼ら自身の健康管理への道だそうです。一般的にインドネシアの人々はお酒は飲まないけども、甘いものが好き、脂っぽいものが好きなので40歳を超えると次第に肥満体格になってしまいます。その予防を兼ねて夜の練習試合は活気に満ち溢れていました。

時々はるか彼方の自宅に帰ることがあるようです。サルマンの話によれば、実家は太平洋戦争の時に日本軍がやってきて。焼かれてしまったとの事です。それは口承で当時の様子は全くわかりません。今82才のお母さんは今も健在で元気で村に暮らしています。昨年は数度も会う機会を持ちましたが、病気で患うこともなく、認知症の気配もなく、健やかな日々を過ごしていらっしゃいました。チャンドンという村で、妹夫婦の家に住んでいます。この州はミナン族が中心の社会です。ここでは、財産相続権は男系ではなく、女性優位の社会なのです。サルマンは奥さんの力が強いようですが、モスリムはほぼ同等な立場で生活をしているようです。

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