2017年1月14日土曜日

2.05バブルの弾けたヤンゴンの経済



  この記事は1998年にミャンマーを訪問した際の日誌を再編集したものです


2.05バブルの弾けたヤンゴンの経済

ヤンゴン市内(旧植民地時代の建物)
お隣りのタイのバブルが崩壊した事を受けてミャンマーもまた同様な現象が発生したそうです。最近のヤンゴン市内でのビルの乱立がそれを物語って居るでしょう。ここ数年前から急激に国外からの資本が流入しそれらを利用してヤンゴン市内では盛んにビルの建設工事がはじまりました。
今はその価格が高騰した時の3割程度ダウンしました。各地にがら空きのビルが増えてきました。今後も経済の活性化がなされないと立ち並んだ巨大高層ビル群の価値は下落を続ける一方でしょう。
マレーシアのペナン島のジョージタウンにはコムターという有名な高層ビルがあります。これはずいぶん前に国家のプロジェクトとして建設されたのですが、未だに60階建ての円形のビルは今も空室だらけの施設です。これが計画された時から不評でした。この地域の経済規模を無視した巨大な商業ビルの存在もバブルの崩壊と共通したものがあると思います。

さて話は余談となりますが、タイのバブルの崩壊及び通貨危機は一体どのような経過を追ったのでしょうか? まず第一の理由としてタイの政府が対ドルのレートを過去13年間の間固定していた事があげられるでしょう。もし米国とタイランドのインフレ率が全く同一であれば購買力平価は同じに進行し問題は起きなかったでしょう。しかしタイランドは年率7-8%のインフレ率を、ときには2桁で進行した年度もありました。勿論この事は自動的にドル換算で計算すると国民総生産の金額が統計上跳ね上がる結果となりました。賃金も上昇を続けドル表示では倍増しました。訪問するたびに物価上昇を肌で感じました。すなわち、先日迄の通貨のレート(一ドル=25バーツ)はタイランドの実際の国力を反映していなかったわけです。
第二に一旦工業化に拍車がかかったように見えたのですが、よく観察してみるとこの国では自国の目玉商品として一体何が生産できたでしょうか?どうも単なる組み立て産業のみに頼っていたのが本音かと思います。盛んに技術移転等という言葉が横行し、あたかもそれらが進行したように見えましたが、実際は何も技術移転はなく空白のまま現在に至ったのでしょう。日本で出回るキヤノンのコピーの機械の多くはタイランドでの組み立てによる販売です。よく考えてみるとコピー機器は、その部品の多くを日本から輸入し現地での単なる組み立てをしているのみです。この機器は大きさとか精密度に関して検討すると超精密捜器でもなく構造も比較的単純な商品です。 現地部品の構成率を高めるとしてもその部品自体も単純なものが殆どです。
カメラや時計等の生産も国内で可能なのですが、国際的な競争力は果たしてあるのでしょうか?香港製やマレーシア製のように競争力があるのでしょうか?しかもこれらの工業製品を製造する為の装置や器材等の資本財の輸入が必要な筈です。部品も輸入しなければなりません。こうして貿易収支は常に赤字を続けていたようです.その赤字を埋める政策として資本収支で帳尻を合わせる事が続きました。通貨を実勢より高く保つ事に依って見かけ上は平静を装う事ができました。この反面対外債務もかさむ一方となり現在に至ったようです。
ここにそれぞれの国の実力というか真の経済力、工業力、科学水準が表出してくるのではないでしょうか。例えば電子レンジは日本が長年の間特許権を得てマイクロウェーブの発生装置を独自ものとして世界にヒットした商品です。数年前にこの特許がきれて韓国が独自で製造し世界中に格安の商品が出回る事となりました。韓国は例えそれが模倣であっても、自国で一式を製造出来る技術があった事の証明です。日本の経済力の根源は石ころを輸入して極めて付加価値の高い商品に転化出来る知識と技術に在るのではないでしょうか?
隣りのマレーシアは昔から教育にも重点を置き知抜集約型の産業の育成に国家は取り組みました。その効力があったとみえて昨年度のPC関連商品の輸出額は過去最高に達したと新聞では報じられていました。さてタイランドでは現在何が輸出できるのでしょうか?何となく振り出しに逆戻りしたような印象をぬぐいきれません。結局繊維関係しかないのではないでしょうか?これらに関しても対ドル25バーツのレートではその外の発展途上国例えばバングラデッシュやインドの製品のほうが遥かに安く交易されているという事実があります。(現在のレート45バーツであれば晶質等を勘案すると競争力があるように見受けられます)
3の理由として国外から流入した資本が土地や建物の投機に回り実際の再生産の為に使用されなかった事ではないでしょうか?土地や建物、株価等はそれらが実際に売買され資金が移動すれば再循環するのでしょうが、それらは売買される事はなく単にその会社の資産の一部として帳簿価格という架空の数値が膨張したのみで終わっています。流入した資本が正常に利用されず、真の目的は何処かに置き忘れていたようです。もしこれらの資金がインフラの整備や将来の発展の為の基礎技術の開発として利用されていたならば国家の経済力はその実力を増す事が出来たものと思います。
わかり易く説明すると或るパン屋さんが将来の発展を期待して銀行から借金をして巨大なマンションを造り経営に乗り出した事にも似ています。元来借りた資金をパンの製造に関した研究開発やコストダウンの実施に用いるのであれば、そのパン屋さんはバブルの崩壊を経験する事なく事業は順調に運営される筈です。ここで投機という心理が人々を惑わせたのではないでしょうか?
さてインドに於いてはバブルの崩壊という現象が発生するものでしょうか?インドの主要都市の構造を眺めると英国の残した植民地時代の建物群という巨大な社会資本の充実がありますから現在発生した東南アジアのそれとは異なった状況を呈するのではないでしょうか?土地価格の上昇は当然の結果として存在しますが、建物の新築ラッシュはごく一部の地域を除いて現れていないようです。バブル崩壊の現象を示したアジア諸国での都市の構造は近年になって人口増加をになった土地です。′
戦後の時点では、これらの都市の規模はそれぞれに小さかったはずです。近年になって世界経済が拡大し自由化を推し進められるにあたり急速に資本も移動し始めました。平地で木造建築の多かった東南アジアの諸都市は絶好の資本投下の機会を得る事となりました。外からの投資に依って将来の発展性を先取りした形で建築ラッシュが続いたように感じます。
その点インドの市街には、既に英国に依って建立された多くの超ロングライフの石造りの巨大な構築物が多く残っています。一部の手直しのみで現在も利用する事が可能です。従って他の国の様に建築ブームが広がらない要素を抱きかかえているのではないでしょうか?

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