12 .トピックあれこれ
12.1ミャンマーの謎
この記事は1998年にミャンマーを訪問した際の日誌を再編集したものです
女性は働き者 |
ミャンマーに暫く滞在して不思議に思う事があります。その一つとしてこの国の人口増加率です。 他の発展途上国からすればかなり低い数字に収まっているのは何故でしょうか? 政府の統計によると1991年から95年迄の5年間に4078万人の人口が314万増えて4392万人にしか達していません。この事は年率にして1.83%の増加です。 国連の統計によると通常2.3%を超えると危険で何らかの人口抑制策を講じないと大変な車となると大騒ぎします。 インド等は必死になって政府が宣伝しても今は10億を超える人口になってしまいました。 中国は厳しい政策で一人一子制度に踏み切りました。 所がここミャンマーでは政府がそのような指導をしているとは聞いていません。さてどうしてでしょうか?
幾つか考えられる点はインドに比べて結婚年齢が高いのもその要因の一つではないでしょうか? 通常20歳未満で結婚をするという事は人間の生殖活動の最も活発な時期を選んでいますから、当然の事として子供の数は多くなります。 晩婚であらば或る程子供の数少なくなるのが自然の摂理です。 その外の要因として僧侶や尼さん等生涯を独身で過ごす人々の数がかなりに占め、それらも数%寄与しているように思います。 医療設備の不備で幼児の死亡率が高いのかと聞いてもどうもその気配も薄いようです。 実際の乳幼児死亡率がどうなっているのか実態は定かではありません。
識字率の高い国は概して人口増加率は低くなります。 この国では殆どの人が読み書きできますから、その点も影響を与えて居るのでしょう。 町にはエイズ追放の宣伝板が貼ってあり何かとミャンマー語で説明が加えられています。 こういった事から避妊具の使用率も高いのかも知れません。
この国では老人の数が左程目立ちません。 お年寄りは一体何処へ行ったのでしょうか? 同様に発展途上国では高齢な人々も貴重な労働力として外で働いている光景を見ます。 インドでよく見かけるよぼよぼのじいちゃんの引く人力車もその典型でしょう。 この国では年寄りは早死にするのでしょうか? でもこれだけ環境の良いストレスの溜まりにくい場所に住んで早死にするとは思えません。 若い頃の放蕩がたたって早死にするとも考えられません。 老いても若く見えるのでしょうか? 人口増加率が低い事についてピーという町で元活動家の坊ちゃんに訪ねたら「その質問は一寸ワイルド過ぎるので答えれません」と話しはストップしてしまいました。 しかし不可解な現象です。 各家庭の子供の数も多い人は5-6人抱えています。
さてこのミャンマーという国家では能力があれば伸びる社会なのでしょうか? それとも伸びる事を必要としない社会体質を持っているからなのでしょうか? 我々の道徳観では努力すれば必ず報われるという諺にもあるように.、こつこつと努力する事を美徳としています。 石の上にも3年という諺もあります。 ミャンマーの場合は努力すれば幸運が舞い込んで来るかも知れないよという哲学(仏教思想)の上で成り立っている気がしないでもありません。この当たりの事柄についても謎だらけです。 現在の政権が周囲の動きに左右されずに真に豊かな仏教に根ざした国造りに励んでいくのか、矢張り隣のタイランドの様に近代化を推し進めて行きたいのかよくわかりません。仏教の発展と産業の発展を今後どのような方式で基本的な矛盾点を乗り越えて行くのか観察を続けて行きたいと思います。
タイランドから或るは、インドから、国名を問わずに国外からミャンマーに足を踏み入れるとカルチャーショックは大きいものがあります。 それはインドのそれとも異なります。 極論するとミャンマーという国が「国家全体が精神世界の発展に努力をしている反面、物質的な面で大変遅れている」と単純に判断して良いものなのかどうか迷います。 もう一つ不思議なことに、この国では貧しいのに何故物をねだらないのでしょうか? インドやスリランカ等を訪問するとあなた方は金持ちだから私たちに何かを恵むのが当然という態度を示されて呆然とする事があります。 ミャンマーでは時々強制両替の場所で銀行の職員がちらりと呟き、暗におねだりの態度を示される程度で終わってしまいます。 同じ仏教国のスリランカでは長年に渡ってこの習慣が体に染み込んでいるようです。 外人と見ればすぐにお金持ちと解釈し金品をねだられるのは多くの人が体験しています。 回教徒の考えでは金持ちは貧しい人に対して収入の1割を寄付しなければならないと回教の教科書(アル・コーラン)に明記してあるそうです。 ミャンマーの場合、彼らは食べてさえいければ、それで満足だからなのでしょうか? ねだるという習慣もないのかも知れません。 しかしこうなると逆に何かを差し上げたくなる気持ちがじんわりと沸き上がって来ないでもありません。
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