2016年12月20日火曜日

12月9日パゴーからタージィ 列車の旅

パゴーからタージの切符二人分
目玉焼きライス
今日の朝は6時50分に目覚ましをかけました。ともかく7時までに駅に行かなくてはなりません。目覚ましをかけたものの、それ以前に目が覚めてしまいました。宿の従業員3人は受付のある床にマットレスを敷いてまだすやすやと休んでいます。私たちがごそごそとし出したのを感じてか、彼等も素早く起きてお別れをしてくれました。列車出発は7時40分です。駅と言っても5分ほど歩けば到着する距離です。昨日の確認情報では駅前には数軒ものお店やお茶屋、食堂があるのが分かっていたので、余裕たっぷりです。さて、駅に到着してまずは駅長室へ。パスポートを見せて切符購入ですが、何と料金は二人分、上級席で12500チャットです。円換算で二人で1000円という感じでしょうか?これで、距離にして400キロ以上離れ、10時間も列車に乗れるというのは、最高の贅沢かもしれません。切符の販売窓口では普通席の客が列をなして順番を待っていましたが、様子を見ると、ミャンマー国鉄は赤字そのものの気配がします。500円で400キロの移動が出来るという事を信じますか?東京から名古屋の距離に該当するでしょう。普通列車で移動しても4000円はかかります。まさしく謎だらけのミャンマー国鉄です。じっくりと考えてみれば、なるほど納得がいかないわけではありません。人件費が日本の10分の一、設備も日本の50年前と似たりよったり、いやそれ以上古いかもしれません。駅の設備は、とっくに減価償却済の建物です。勿論日本でいうATS(自動列車制御装置)などがあるわけでもなく、システムも超旧式に沿ったもので運営しています。営業係数は1000ぐらいになっているのではないでしょうか?まあ列車の本数が極めて少ないので事故の確立は極めて低い、列車速度も40キロ程度での低速運転ですから安全と言えば安全。思い出してみると微妙な乗り物でもあります。

駅員は私たちを待っていたかのように、まずはこちらへと丁寧に切符売り場の事務所内に招き入れられました。支払いの段階で私がお札を間違えて5000チャット多く出したら、駅員さんは、「あれ、多いですよ」と即返金してくれました。ここでも、ミャンマー人の人の良さをしっかりと感じざるを得ません。
切符を購入後まだ時間があるので、駅前のモヒンガ(ミャンマー麺)店に入り、朝飯の代用にしましたが、これが又微妙な味で美味しくさっぱり味でなんとも言えません。水やお菓子などを買い込んで、陸橋を渡って2番線で待機です。駅員も親切で、この辺りでお待ちくだされと、丁寧にご案内!これが本当のおもてなしというものでしょう。ファーストクラス優先とか、上級の客を優先する最近の日本の傾向は、本当のおもてなしなのでしょうか?お金のない旅行者は残念ながら日本ではおもてなしにあずかることが出来ない仕組みになっています。しかし、ここはミャンマー、見かけは泥沼に足を突っ込んだような世界ですが、心の中は譲り合い、助け合いにあふれた豊かな社会に見えてかないません。日本の大都会は整然とし、綺麗で清潔かもしれません。しかしそこに住む人々の心の中はどうなっているのでしょうか?見かけは良いのですが、心の中は、様々な欲望の渦、妬み、嫉妬、競争で追われて悲惨な状況に追い込まれている気がしてなりません。宿で働く幼い子供達は教育の場を失っていると言われます。しかし、彼等の瞳は明るく輝き、澄んだ瞳をくりくりさせています。日本の子供達は教育の機会が与えられても、様々な問題を抱え不登校になったり、子供の貧困が叫ばれている時代です。この開きをどう解釈すればよいのか、悩みは尽きません。
列車は定刻に到着です。私たちの席は上級クラスでB10 C10の二席が割り当てたられていました。この車両だけで30人分の席があります。その中で外人の姿もちらほら見えます。パゴーから乗り込んだ外人は私たち二人のみでした。この列車はヤンゴンを6時に出発しています。となると朝5時頃から起きて準備しなくてはなりません。それを避けてゆっくりと出発するには、ここパゴーからの乗車が最善の方法になりました。前日11時の列車を利用して翌日マンダレー行きの7時40分の列車に乗り込む。ついてにパゴーの街を観光という一石二鳥になるわけです。
ここパゴーはモン族の支配地としてペグ―王朝として栄えるなど歴史的にも幾多の政争を繰り返した町ですが、その名残を留める遺跡は殆ど見当たりません。概して、これは東南アジア各地の王朝の形態のパターンともいえるでしょう。基本的に建造物は木造ですから、長くは続きません。戦で燃えたり、破壊されたり現存する事はまずありません。これがインド各地だと石造建築が多くなり、今でも過去の栄光をまざまざと見せてくれるのとは大きく異なります。さらに、もう一つの要素として、これだけ仏教の信仰が強い土地であれば、人々の心は王朝よりも寺院に力を入れるでしょう。政治が変わっても、信仰が生き続ける状態が延々と繰り返された部分も見落としてはなりません。パガンに残る仏教遺跡は、その一部が今でも信仰の対象となり多くの巡礼者を迎えています。近代史を眺めても、英国植民地、東インド会社の植民地そして日本軍の占領下、さらに旧ビルマ時代のネ・ウィン氏による半鎖国を伴ったビルマ社会主義計画党の下、タン・シュエの軍事政権の下、そして今はアウンサン女史の政権の下であっても、人々の心は常に仏教を基本とした社会が構成され続けたという事実があります。お寺は立派に存続していますが、王宮は一体どこに消えたものでしょうか?更に加わる理由の一つは、国家(王朝)の規模が他の地域に比べると小さかった事も挙げられるでしょう。かといって、確か日本の江戸時代の総人口は3000万人ほどだったと思います。となるとミャンマーの王朝の総人口も極めて少ないものだったのでしょう。自給自足の生活、当然の事として産業というものは、殆どない社会です。今のGDPに置き換えるとその数値は更に低いものになるでしょう。西暦1500年頃商業の中心地として栄えたようですが、日本でいうと戦国時代、安土桃山時代です。当時のお城は日本でもまだ残っているものがあります。これを対比して考えると面白い答えが、様々な見方が出来るようです。

さて、列車は勿論冷房なしですが、動き出すと気持ちの良い風が入ってきます。目的地タージィまでは10時間ほどかかりますが、途中の停車駅は10か所ほどしかありません。ピンマナ、タウンゴー、ネーピードゥなど大きな駅に、時には1時間ほど連続運転を続けることもあります。車内には様々な物売りが巡回してくれます。15年前に乗った列車で記憶にあるのは、列車内での貸本屋でした。長距離の客の時間つぶしにビニールカバーをかけて補強した書籍を抱えて車内を歩きまわっています。客も必要に応じて本を広げ借りていきます。ミャンマーならではの光景でした。最近はスマートフォンが手にはいり、データ通信の状況がものすごく良くなり、いつどこでもインターネットが使えます。本を読むよりも、スマホのフェイスブックでチャットしている方がはるかに楽しいに違いありません。誰もがこの道を歩むようになり、名物の車内貸本屋は姿を消してしまいました。
卵焼きライスは500チャットでたっぷり分量がありました。果物も各種売りにきました。スイカの切り売り200チャット、茹でトウモロコシも200チャット、お水もガンガン冷えたものを販売しています。日本では見かけなくなった車内販売は、ここでは活き活きとした姿を見せています。中でもユニークなのは、魔法瓶にお湯を詰めてのコーヒー屋さんです。商売道具は魔法瓶とプラスチックカップそして各種コーヒー、紅茶の一人用パック。最も大切なのが、コンデンスミルクです。縦揺れ、横揺れのジャンピング列車内で、器用にお湯を注ぎ、手早くスプーンで下に溜まっているコンデンスミルクを混ぜ込む作業は、それを見ているだけで魔法にかかったも同然です。さて、コーヒー屋さんは成り立つのでしょうか?原価は大きく見積もっても100チャット。売値は300チャット。今回の列車内で2時間ほど稼働して30杯売れたとして200チャットの利益だと仮定すると6000チャットの儲けになります。ヤンゴンでの最低賃金が7500チャットに法令で定められているそうですから、そんなに悪い商売ではありますまい。あまりの手際よさに感激して二度そのお茶屋さんから買ってしまいました。
とうもろこし屋のお姉さんは頭上に茹でトウモロコシを沢積み込んで、列車に乗り込みました。早速一本購入です。1000チャット出したらお釣りがないから後でいいとか!それで40分ほどしたら、お釣りを準備してようやく清算となりました。あれあれ、私が途中下車したら、支払いがこぎつきになるのに!いやはやゆったりとしたものです。インド辺りだと、客が先ずお金を渡して、お釣りがドロンの場合がなきにしもあらず、しかしここでは全く逆の現象です。
列車に乗ってしばらくすると目玉焼きライスの販売が始まりました。これって単純な料理ですが・・・白飯の上に目玉焼きがポンと置かれ、小魚なのから揚げ佃煮風と、日本で言う漬物みたいなものが乗っかっています。いや口にしてみると絶品でした。それでお値段が500チャット(45円)。

さて、午後になってからは、陽射しの具合が逆になり、西日が当たるようになりました。これだと暑くて耐えれません。幸い、反対側に空席があったのでそちらに移動。列車は予定通り18時10分過ぎにタージ駅到着です。真っ暗で細々とした灯しかありません。人の後についていくと、いつの間にか駅の外にでてしまいました。どうも我々は駅正面出入り口というものを見誤ったようです。ホームの端から市内へ続く道路に出てしまいました。




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