ここサバ州には鉄道が走っています。おもちゃのような小さな鉄道ですが結構これは思い出に残る旅となったのです。昨日観光局で聞いた所によると、1日で日帰りは難しいとの事でした。列車の終点テノムからKKに帰る最終バスは午後4時とかで、KKから接続する列車がテノム駅に到着するのと同時刻です。それで、現地で一泊の予定で荷物を抱えて朝7時に宿を出発しました。ホテルを出てすぐの所にタクシー乗り場があり、交渉で20リンギットで妥結(宿での情報では25リンギット)し一目散に駅に向かいました。
今日は日曜日とあって駅は結構な人出で賑わっています。時刻表によると、KKのタンジュンアル駅が7時45分発でビューフォーという駅に到着するのが10時。そこで3時間半待って午後1時半の列車でテノム着という事になっています。料金は格安で全行程130キロの区間はビューフォーまでが4.8リンギット、それからビューフォーからテノムまでが2.75リンギット合計で240円ほどしかかかりません。ともかく試乗するには最適、そして合計三種類の車両に乗るという確かなアドベンチャーが待っていたのです。
最初のビューフォーまでの車両は冷房付きのわりとモダンな車両で快適なものでした。車内はほぼ満席の状態で定刻に出発したのです。早くもなく遅くもなく田園風景を眺めながらの田舎の列車という風情のある試乗です。冷房の効いた車両でうとうとしている間にビューフォーという駅に到着しました。しかし、ここは何の変哲もない小さな田舎街です。街を散策すると言ってお15分も回れば一周し終わるほどの田舎です。それでも、ホテルらしきものもあり、街のシンボルとなる市場、回教寺院が立ち並び街としての体裁は整えているようです。ここで昼ごはんを食べて列車待ちとなりました。マレーシアでは、列車の出発前にならないと乗車券の販売をしないのが通例です。ここでも多くの乗客が待っていました。果たして満席になったら立席で2時間半の旅になるのはつらいなああと考えながら、混雑する駅校内を眺めていたのですが、我々はかろうじて全員着席することが出来ました。車内には遠足に来た子どもたちも乗り込んでいます。先ほど駅で話かけて来た小学生のグループです。駅構内の待合室で待っている間に、恥ずかしそうに「どちらから?」と声をかけてきた少女グループも一緒です。少女少年の混合でサバ州の西海岸にあるサンダカンから修学旅行に二泊三日の予定で来ているとの事。勿論先生が引率してのグループでした。彼らはいずれも小学4年生とかで、ワイワイ楽しそうにはしゃいでいました。
列車の席取り競争は厳しいものがありました。我々老齢組はうろうろしていると座席を確保することが出来ません。そんな中で待合室に一緒になった子供たちも混ざっていました。この列車は車両から車両への行き来が出来ない構造になっているので、一旦乗ると決めたからには、後戻りは出来ません。子供たちの中には先に乗り込み仲間たちの席を確保して待っている子もいました。そんな所に私達も割り込みすることになったのです。対面4人がけの一角に少年が友人たちを待っていたようですが、それとも気が付かず、我々も必死で座席をゲットです。お陰で、その少年は我々日本人4人組に拉致されたように、囲まれてしまい、大人二人に囲まれてヒョコンと仲間から取り残されて座る羽目になったのです。さぞかし、本人も困った事でしょう。
さて、この列車はまるでおもちゃのような車両です。一時間ほど乗ると車両を乗り換えが待っていました。さあて、乗客は全員下車して、次の列車に総移動です。その車両というのが唖然としちゃいます。貨客混合列車です。さしずめ家畜移送用車両に簡易なシートを数箇所取り付けただけで、屋根はあるものの、ドアや窓は一切ありません。列車の速度が遅いので大きな事故にはつながらないと思うのですが、あまりにもオープンな運行状況に我々は驚愕の意を払わざるを得ません。途中でカヌーやその装備と共にラフティングのスタッフが器材もろとも乗り込みました。なるほど、これは、通常の車両では無理難題で積み込むにはえらく時間がかかります。貨物車両ならば、わけなくスイスイと積み込むことが出来るのです。そんな異様な光景をまざまざと見せつける特殊な旅だったのです。無事終点のテノムへは4時前に到着することが出来ました。
事前にテノムについては、ネットで検索済みです。安い宿もあるようで最初のターゲットはSRI
PERDANAという宿です。街があまりにも小さいもので、駅から歩いてわずか5分の距離に看板が見えるではないですか!外観はあたかも場末の木賃宿にしか見えません。受付の爺さんも胡散臭そうな対応です。それでも、私達が日本人だとわかると次第に笑顔が蘇ってきたのです。料金は60リンギットのツインと46リンギットのツインの2つを利用することになりました。勿論この値段でトイレ・シャワーそしてテレビとエアコンが完備です。60リンギットの部屋は3人部屋というか、ダブルベッドが一つとシングルベッドが一つの大きな部屋でした。街そのものは、閑散として静な一夜を迎えることが出来たのは云うまでもありません。時には趣向を変えて何にもない田舎の宿に泊まるのも旅の醍醐味の一つかもしれません。ちょっと街を散歩すると屋台街もすぐに見つかりました。
ビールが飲めて安価な食堂を見つけるには多少の経験が必要となります市場の裏側に数軒の中華系の食堂がオープンしています。概してアルコール系飲料の置いてある店は大通りには数少なく、裏通りを探せば必ず見つかるというのが定説です。マレーシアの旅の基本は安食堂を見つけてビールの値段を確かめることから始まります。さて、この街の不思議は、どの店に行ってもビールは二重価格になっているようです。同じ缶ビールでも値段を聞くと不思議な答えが帰ってきます。「税込みだと一本5リンギット、税なしだと一本3リンギット」そうとすれば誰も高いビールは飲まないはずです。考えてみると、いわゆるコタキナバルのはるか沖合にあるラブアン島からの密輸品が出まわっているようです。お店の方もそれをわかっているのですが、自分たちから堂々と販売することは違法になります。法律の隙間をくぐるかのように、いざという時の責任回避を兼ねての苦しい言い訳になっているのでしょう。「お客が自分たちで税金のかかっていない缶ビールを持ち込んでいるのだから我々に罪はない。こちらは正規の値段で販売しようとしているのだから。」この倫理がまかり通る不思議なお国柄なのです。今日も安心して、お腹いっぱいビールで乾杯です。所で今日のレストランの酢豚は今までの中華料理の中で一番美味しかったようです。ちなみに麻婆豆腐も頼んだのですが、これも正解でほどほどに辛味があってまろやかな舌触りの絶品が並んだのです。
のんびりと列車の旅もいいもんです。ボルネオ島のジャングルの中をゆっくりと走ります。
返信削除あるいは、川に沿って進んでいきます。貨車に乗せられた我々は、はたして 人間でしょうか?荷物でしょうか?